先日レコーディングに来たトラックメイカーさんが言ってらしたんだけど、トラックメイキングにおいて「どんだけ頑張ってもキックが向こうに負ける」のだそうだ。使用機材や方法論は同じでも。

これは僕も常日頃思っている、「ドラムサウンドが常に向こうに負けてるなー」という印象とリンクするものです。

ま、勝ち負けではないんだけど!

はっきりいってマイクやマイクプリ等の機材は向こうに負けてるなんて事は少なくともない。楽器レベルで考えてもパールやヤマハ、TAMAなど日本のドラムは世界を席巻してるわけだから楽器のせいではないはず。

では、なぜそのような音の差が出るのでしょう。
まずは日本の現場ではドラムの音を確信的に(もしくは結果として)悪くしている、というか地味にしてるというのがあります。歌を活かす為です。日本のボーカリスト は「声が弱い、歌が弱い」場合が多く、ドラムサウンドが良すぎたり迫力がありすぎるなどしてドラムに耳が行くようでは曲として成立しなくなる可能性が出できちゃう。だからLOWの少ないドラムサウンドにしてしまう(他のオケも含めて)。まず、一点はそれ。

第二点としては、単純にドラムサウンドに対しての感覚が成熟してないというのが考えられると思います。
アメリカなんかだと特にどんなアマチュアバンドであれドラマーはマイセットをライブに持ち込むらしい。それが当然の日常なんだそうです。(ドラムの売り上げも日本の比ではないと)

日本ではワンマンならともかく、対バン式のライブでのセットの持ち込みや入れ替えなどあんまりやりません。運搬の問題もあるだろうし、さらにライブハウスも嫌がるでしょう。
ライブハウスにしても良いところもあるでしょうが、大方とんでもない状態のセットで金すら取る有様。リハスタしかり(最近の都内のスタジオはかなりいい感じのところが多いですが)。つまり、みんなドラマー含め『ドラムの音をあんまり知らない』んですね。
ドラムの良い音も、音のバリエーションの幅広さや深みも。一つのセット・スネアからいろんな音が出せる事も認識できないでしまっています。


例えばレコーディングで良く感じるのですが、スネアの音の好みの傾向がみな画一的であること。ハイピッチで倍音カンカンでサステインの長い音を好む傾向が”未だに”驚く程高いです。
スネアの音にはドスって音からパスっ、ダッ、スタン、カン、トワーンまで非常に幅広いバリエーションがありますが、カンカンだけが非常に好まれる傾向です。
音には流行りがあるのが解りますし常に目新しくあるべきだとは思わないですが、ちょっともう食傷気味な音の傾向です。(最近はダスっがやっと流行りだ出しましたけど)

欧米のサウンドを見ると一枚のアルバムの中で様々なスネアのトーンに出会う事ができますが、日本のアルバムだとスネアのトーンのバリエーションが非常に少ない気がします。
バンドの場合、曲によってスネアのサウンドがいちいち変化するのはドラマーの個性付けや統一感の面からあまり好まれない側面があるのは承知だけれど、アーティストモノの場合もっと幅広いスネアのトーンバリエーションがあってもいいと思うのは僕だけ?もちろんドラムセット自体のトーンも。

現場プロデュース的にどのドラマーを呼ぶのかとかにも関わってくるけれども、あまりにドラムサウンドの追求に時間が割かれてないような気がするCDが少なくないです。
限られた予算や時間との兼ね合いがあるのは重々承知の上でもあるけれど。

作品の音の質感を大きく左右するドラム、手順的にも始めに収録されるドラムであるからして、そのサウンドは以降にダビングされるウワモノの音を左右すらするはずでしょう。
結局ドラマーもプロデュース側もドラムの音にそこまで「拘ってない」のでしょうか?
特にエンジニアはドラムのマイクセッティングと音決めが早いほど現場では優秀とされる傾向があります。
だからドラムの生音に問題があっても卓を離れず手元のEQやコンプでささっとやってしまう。。。

つまり生音を聴いていない。もしかしたらしたら興味すらない(?)。
これはあり得なくないすか。。。
ブースの行き来すらおっくう?。。。。


また、相手が著名なドラマーであるほどなんとなく音に注文がつけづらい雰囲気があったりもします。ドラマーによってはその音自体がトレードマークである事も多いでしょうし。

しかし、本来ドラムサウンドとはそういう簡単なものではないと思うんです。厳密に言うとドラムサウンドと音楽の関係がそんなに簡単なモノであるはずがない!ということでもあるでしょう。
ドラムサウンドとは、ドラマー自身はもちろん他のパートのミュージシャン、そしてエンジニア等現場にいる人間皆で創り上げるべきものですよ。ドラムチューナーさん含め。

そのぐらいそれは大切で、音楽そのモノを左右するファクターであると僕は思っています。

あらゆるポピュラー楽器の中で最も繊細な音作り(楽器レベルでの)を要求されるドラムに少し無頓着とも言える状況こそ、日本の音楽的成熟が達成されてない事を示唆しているような気がするんです。
(もちろんすごくこだわってる方もたくさんいます。※スタッフが美味しくいただきましたという意味合いぐらいのお断り)
mixでどんだけいじくってもまったく無意味に近いんです。


これは言いすぎになるのでしょうか?

ウィキペディアでみつけたラウドネスの樋口宗孝さんの名言が印象的でした。
「やっぱり樋口が叩くとこうなるな」では終わりたくない。
それはプレイも音もでもあったのだと思う。つねに幅広いサウンドと音楽性を追求するべきと。

みんな『ドラムってこんなもん、こういうもん』と決めつけすぎてないでしょうか。
playスタイルしかり。


最終的に冒頭のトラックメイカーさんは、
「打ち込み的手法でリズムトラックを作成するにしてもやはり、ドラムの音は楽器で生で根本から作らないとやはり向こうには勝てない」とひとりごちていました。


やはり最後は結局そうなります、なりましょう。

ちなみにトラックメイカーさんにはうってつけの生ドラムループ集はこれですよ。リズムを解体し再構築して打ち込みに使うのも、あり!

https://www.edo-mae-recordings.com/edomae-loops/ryo-kanda-trip/

とにかくドラムのことならなんでも僕にまずはご相談してくださいな!冷やかしでもok (笑)

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