和楽器・純邦楽録音店

民謡・箏・三味線・尺八・琵琶・詩吟・和太鼓・雅楽・義太夫・浪曲・清元・
常磐津・新内・河東・一中・宮薗・荻江・長唄・小唄・端唄・うた沢・地歌。。。。
等の録音をする吉祥寺の江戸前録音店。
独奏から合奏・アンサンブル、演奏会の録音や
CDのレコーディングを承ります。

 

確かな技術と作品作り

 各演奏会場・ホール・稽古場等、録音場所を選びません。
マイク等すべての機材を持ち込み収録させていただきます。
また、自社スタジオもございます。

作品はCDやカセットなどご指定の形で納品いたします。
CD店での流通用、演奏会での販売用の製品CD・記録CDの
作成・製造も承ります。
ジャケットや歌詞カードのデザインも一括で御請けできます。

専門的なハイレゾや配信用の作品の作成も可能です。
 

価格

 半日¥66,000(税込)から
録音内容・収録場所により異なります。

お気軽にお問い合わせください。

録音見本 『琵琶デュオ』

中世から続く4弦4柱の薩摩琵琶の後藤幸浩と昭和の改良5弦5柱琵琶を操る琵琶水島結子によるベテラン×若手女子の世にも珍しい琵琶デュオ。
2013年春、江戸前録音店のサウンドプロデュースにより、デュオでの初アルバム「琵琶デュオ」発売。

江戸前サイト内にて琵琶デュオCDのハイレゾダウンロード版、好評発売中!

琵琶デュオのサイトはこちら

 

RECORDING REPORT

 

2013年2月某日、埼玉県岩槻の芳林寺にて行われた江戸前レコーディングスのサウンドプロデュースによる『琵琶デュオ』のレコーディングについて、その使用機材と収録方法を簡単にご紹介致しましょう。

琵琶デュオさんは男性の後藤幸浩さんと女性の水島結子さんによる『琵琶弾き語りx2』のお二人です。今回のレコーディングは伝統的な古典にそれをふまえたオリジナルを加えた10曲の合計約80分、アルバム二枚分の収録でした。
今回のCD化にあたってのコンセプトはアーティストサイドと何度も ミーティングを重ねた結果、演奏も音質もとにかく『リアリティーを追求する』の1点に絞られました。リヴァーブの過度に付加された『遠くて小綺麗な音像』 の一般的な邦楽CDのようにはしない、かつ1発録りでというものです。

レコーディングは芳林寺さんの本堂の伽藍真ん前天蓋の真下にて行わ れました。基本収録機材はprotools10のimacとMACKIE Onyx Blackbirdで、マイクはメインにaudio-technicaさんよりお借りしたリボンマイクAT4080を琵琶にそれぞれ、語りつまりヴォーカ ルにはshure のβ57(専用ポップガード付き)を、琵琶のサブにはEVのcardinalをそれぞれ立て、オフマイクとしてaudio-technicaの AT4050二本をチョイスしました。

AT4080は琵琶の撥の当たるあたりを少し逃がしたポイントを約80cmより狙い、β57は口の正面約10センチに設置。cardinalは演奏の邪魔にならない位置でなるべく近く琵琶本体を狙いました。

琵琶の撥があたる『バチっ』という音は想像を超えるほど大きなピークがでます。
その際リボンマイクの程よくアタックを丸めてくれる特性と痛くならないゆるやかなhiの伸び、そして低域の豊かな特性が琵琶とはバッチリでした。
またヴォーカルにダイナミックマイクを使用した理由ですが、まずコ ンデンサー系ほど指向性が広すぎないことです。これで過度の琵琶からの被りを軽減させる事が出来ます。ダイナミックマイクでなるべく近接でリアルにヴォー カルを録る事が今回の狙いでしたが、β57は程よくhiが多めなのでポップガードをわざと付けることによって太い音色を得る事が出来ました。

後藤幸浩様 コメント
CDは7枚目ですが今回の録音は特に気に入ってます。語り物「信徳丸」は声、琵琶がかなりの質感で生々しく伝わります。このしっかりした録音を土台に後半はエフェクト処理など遊んで頂いたので、無理なく世界が広がりました。

ミックスはprotoolsにて行い、琵琶の処理は音の圧縮と質感 付加の為のコンプ→出過ぎたアタックを削るためにトランジェントコントロール系プラグインにてアタックの補正というプロセッシング。歌にも質感を極端に出 すほどのハードコンプを掛けました。そこにアンビマイクも適宜加えトータルにさらに質感を加える意味のコンプを加えています。コンプは単体もマスターも最 も粘りが出る質感と気に入っている某プラグインを使用しています。(オンマイクのcardinalは琵琶単体に特殊エフェクト処理する場合のみ、使用しま した。)

以上のようなmix方法で、微弱な『さわり』から激しい撥の当たる 音までの恐るべきダイナミックレンジのある質感もキープしつつ、一般のロックのCDにも負けない音圧感もある、ともすれば単に小さくまとまったhi-fi なだけになりがちな一般のアコースティックサウンドのCDとは一線を画す、リアリティと迫力溢れるサウンドに仕上げることが出来たと思います。

 

水島結子様 コメント
琵琶デュオは、拍数などの回数を決めずに相手のタイミングを見て曲を展開しているので、一発録りの勢いを大事にしたいとお伝えしていました。
流れや勢いが大事、多少のミスは気にしないでいつも通り演奏してください、とサウンドプロデューサーの鹿間さんにも背中を押して頂き、安心して取り組めました。
寒さで琵琶の糸の張りがいつもと違ったり(弦は絹糸をより合わせた繊細なものなので環境に左右されやすい)、使い慣れないマイク(生音の現場が多い)の位置もご配慮頂き、いつも通りの気持ちでレコーディングできました。


江戸前によるaudio-technica AT4080評
どちらかというと現代のマイクロホンはHIの伸びに特化したものが多いのですが、はっきりいってその慣れから言うと『一瞬』物足りないかもしれません。
しかし逆に今良いとされがち、良いと判断され易い楽器と言うのは『倍音豊かで、HIが伸びている』楽器であることが多いですし、機材自体もそのような傾向がある気がします。
なので実はHI×HIで広域成分過多な音質になる傾向が非常に多いと言えます。
そ の分この4080は嫌なHIの伸びも無く、特にケーブル引き回し によって犠牲になる低域が非常にのびています。近接してないのに『近接効果』がある。みたいな印象。今回の琵琶の場合、録音するとアタックや高域成分のみ 録れてしまい、ふんわりした胴鳴り成分は非常に犠牲になってしまうことが多いと思いますが、ふくよかさもしっかりkeepできました。
奏者の後藤様にも『いままでで一番リアリティーのある音になった』との評を頂けました。今回は琵琶ですがこの特性はDRUM、とくにシンバルばかり強調されがちなアンビマイクにももってこいです。部屋鳴りもしっかり録れてるのに近い!みたいな印象になります。
とかく細くなりがちな様々な楽器音を近めでも遠目でもしっかり太く録るためにはもってこいですね!

photo by 須藤友洋